翻訳:OnlyFans が性的コンテンツ排除に乗り出した背景にある巨大な宗教右派運動について

(ポストカルチャー・レビュー ツイッタースレッド 2021年8月20日)

多くの人が OnlyFans の話題を取り違えている。実際に起きている出来事は、セックスワーカーたちの生活にとっても、オンラインの自由全体にとっても、人々が思っている以上に害をもたらす、恐るべき事態なのだ。

OnlyFans がポルノとセックスワーカーを見捨てる理由は、新しい投資を受けようとしているからではない。2021年10月1日に MasterCard が、自社の支払い処理システムを利用するサイトに関する新ルールを適用するからだ。

新ルールが要求するのはつまるところ、OnlyFans(そして MasterCard の支払いを受け取るすべてのサイト)が全てのユーザー、そしてアダルト動画に登場する全ての人を完全に認証することだけでなく、投稿される全てのコンテンツ——リアルタイムのライブ配信を含め——を配信前に確認することだ。

こうした記録保持、確認作業、認証作業、そして他の新たな要求は、コストと時間を強いるものだ。OnlyFans は、それだけの負担をする価値は無いと判断したのだろう。しかし重要なのは、これらのルールはより規模の小さいサイトや個人クリエイターにも強い圧力をかけることになるということだ。

もちろん、MasterCard による支払いを受け取らないことに決めてしまうこともできる。しかし Visa や他社も最終的には同じ方針を採用するだろう。

では、なぜこんなルールの変更がされようとしているのだろうか。それは、昨年12月にニューヨーク・タイムズ誌が掲載したニック・クリストフによる「ポルノハブの子どもたち」という記事が原因だ。この記事でクリストフはポルノハブとその母体企業を、リベンジポルノ、児童ポルノ、性的人身取引を利用して利益を得ていると糾弾した。

一応言っておくが、それらの批判は間違ってはいない。ポルノハブはチューブ系サイトの中でもコンテンツ規制の欠如が際立って悪質で、同サイトに動画が掲載されてしまった人々を搾取していたことは間違いない。クリストフの記事が出たことで、Visa と MasterCard はどちらもポルノハブとの契約を打ち切った。

ポルノハブはその後認証済みユーザーのみ投稿が可能なモデルに移行したが、大手支払い業者たち(訳者注:Visa や MasterCard のこと)の動きは止まらず、性的人身取引や同意のないコンテンツなどに関与している可能性のある他の企業からも撤退しようとしている。新ルールの背景にはこういう経緯があったのだ。

しかし注意してほしい。クリストフの記事には確かにポルノハブの問題についての正しい指摘はあったかもしれないが、彼の記事は非常に印象操作的で、ポルノにおける性的人身取引について痛ましいほど意固地に誤っているものだった。そして、彼がセックスについて書く他のあらゆる記事と同様、キリスト教支配神学的なプロパガンダを取り繕って出したものだった。

クリストフの記事で使用されている一次資料のひとつは、トラフィッキングハブの創設者ライラ・ミッケルウェイトだ。彼女はエクソダス・クライという反セックス、反同性愛、そして反ユダヤ主義でもあるキリスト教団体に所属している。

こういった団体は、性的人身取引やポルノサイトに掲載される同意のない動画には関心など無い。そういった問題を足掛かりにして、より大きな目的、つまり性産業全体を破壊することを達成したがっているのだ。コンテンツの大半が合法で同意のあるものであることは、彼ら彼女らにとってはどうでもよいことだ。原則的に全てのコンテンツが消え去ることを望んでいるのだから。

その目的のために、性的人身取引の問題は都合の良いストーリーを提供してくれる。かつて1960年代にモラリティ・イン・ザ・メディア(メディアの中の道徳)として活動していた反ポルノ団体が、現在はナショナル・センター・オン・セクシュアル・エクスプロイテーション(性的搾取に関する全国センター)と呼ばれている理由もそれだ。

クリストフは同じ役割を担ったことが過去にもある。彼の基本的な戦術は、都合よく調整した性的虐待の個別のストーリーを使って印象操作をすることで、制度の全体の現状を幅広く攻撃するというものだ。彼が非常に退行的なキリスト教福音派の反セックス神話を一般に向けて取り繕って発信する代表になっているということは、誰が見ても明らかだ。

ポルノハブへの攻撃は性的人身取引を止めることに一切貢献しなかったし、一方で合法的なポルノ業界から金を奪うことには非常に貢献した。MasterCard の新ルールは、これの直接的な結果だ。それが意味するのは、キリスト教の反セックスの熱狂的な夢が、オンラインでどのような性的コンテンツが許されるかを決定し始めているということだ。

反性的人身取引の運動はほぼ全体的に、キリスト教の反セックスの考え方のパッケージをリベラルな人々に承認させ、彼ら彼女らを支援者にしようとする福音派の計画なのだ。これは奴らのプロパガンダの中でも最も成功したプロジェクトのひとつだ。そして同時に、多くのセックスワーカーの命を奪うことにも成功しているだろう。

性的人身取引に関与していると非難されることを恐れて Craigslist や Backpage(訳者注:ジモティやメルカリみたいなもので、海外の多くの国では長年多くの人が利用していた)がセックスワーカーによる投稿をさせていないのも、こうした背景があるからだ。そのせいで、顧客を得る比較的安全だった方法が失われてしまい、セックスワーカーたちはより搾取の多い危険な場所へと追いやられてしまった。

反人身取引団体はさらにセックスワーカーが協同していたエイズのプログラムを廃止させ、代わりに禁欲プログラムを導入させてきた。警察に「人身取引抜き打ち家宅捜索」を行わせ、同意のあるセックスワークを大規模に取り締まり、刑務所に送られるセックスワーカーの数を増やしてきた。

なぜか。そもそもそれが目的だからだ。全てのセックスワークを、合法と違法に関わらず、同意の有無に関わらず攻撃しようとする、実質的な力を持った巨大なプロパガンダ運動なのだ。OnlyFans がポルノを見捨てることは、その一環でしかない。事態は今後さらに悪くなる一方だ。

[情報源についてのツイート](省略)

このスレッドで伝えたかったことのひとつを明確にしておきたい。それは、MasterCard のルール変更は性的人身取引を止めるために一切なんの役にも立たないということだ。同意の無い動画の問題についてはいくらかの効果があるかもしれないが、そもそもこれらの新ルールは MasterCard 自身の企業責任回避のためであって、被害者を思ってのことではない。

最終的にこの新ルールが意味することは、新しい基準を満たすためのコストを支払うことのできる大企業の側にいるのでない限り、性的に露骨なオンラインコンテンツを販売することは困難になるということだ。個人セックスワーカーは業界にいられなくなり、大企業はより力を得ることになる。

つまり、性犯罪の実際の被害者への救済などゼロに等しい一方で、合法で同意のある作品のクリエイターたちに対しては甚大な被害を高圧的な与えるのが、今回の変更だ。

実際にセックスワーカーのために何かしたいのなら、保釈金ファンドを運営し非犯罪化のために活動している swopbehindbars.org をおすすめする。
(訳者注:日本では SWASH swashweb.net @swash_jp があります)

[スレッド投稿者のポッドキャストの案内](省略)

原文筆者について

Post-Culture Review @PostCultRev

死を取り扱うポッドキャスト Synodus Horrenda の運営者。

翻訳について

この文章は、上記原文筆者が執筆し、上記日付にツイッターに投稿されたスレッド(連結ツイート)を、マサキチトセが2021820日に日本語に翻訳したものである。なお翻訳は推敲を経ておらず、原文との完全一致を保証するものではない。

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ABOUTこの記事をかいた人

1985年5月26日生まれ。栃木県足利市出身、ニュージーランドとアメリカを経て現在は群馬県館林市在住。2011年にシカゴ大学大学院社会科学修士課程を中退。以降ジェンダー・セクシュアリティを中心に執筆や講演など評論活動をしています。 LGBT運動と排外主義のかかわり、資本主義とLGBT、貧困二世・三世のLGBT/クィア、性的欲望に関する社会的言説の歴史、セックスワーカーの権利と尊厳などに特に関心があります。