元世界チャンピオンが語る「スポーツとトランスジェンダー」(ツイッター翻訳)

ミラーがフィールドでラグビーボールを持ってかっこいいポーズをとっている。

オーストラリアで刑務所の所長をしているキルスティ・ミラー(Kirsti Miller)は、アクアスロン(水泳と長距離走を続けて行う競技)の元世界チャンピオンで、国際殿堂入りを二度も果たしたアスリートだ。同時期にラグビー界でも活躍し、その後も地域のサッカーチームに参加。今はスポーツ界でのダイバーシティ教育に関わっている。

そのミラーが、スポーツにおけるトランスジェンダー受け入れについてツイッターで長いスレッドを書いていたので紹介したい。

※なお、画像の内容も必要に応じて翻訳している。また、スペースや引用符の位置など、明らかに単なる間違いだと分かる箇所は訂正して引用している。更に、ミラーは文献等にリンクを貼っているがその内容は翻訳していない。興味のある人は元のツイートを参照のこと。

キルスティ・ミラーによるツイート・スレッド。内容は以下に翻訳する。

FACT: Including trans athletes will benefit everyone.
MYTH: The participation of trans athletes hurts cis women.

事実:トランスのアスリートを受け入れることは、すべての人に利益のあることだ。
神話:トランスのアスリートが参加するようになると、シス女性を痛めつけることになる。

Many who oppose the inclusion of trans athletes erroneously claim that allowing trans athletes to compete will harm cisgender women.

トランスのアスリートを受け入れることに反対している多くの人々は、トランスのアスリートが戦うことを許すとシスジェンダーの女性に不利益が生じるという間違った主張をしている。
トランスジェンダーのアスリートが参加できるようになってからの、過去8回のオリンピック競技

トランスの金メダル=0こ

トランスの銀メダル=0こ

トランスの銅メダル=0こ

競技に参加したトランスのアスリートの人数=0人
赤色に塗られた州=高校の女子スポーツにおいてトランスジェンダー女子生徒が多数を占めている州

This divide and conquer tactic gets it exactly wrong. Excluding women who are trans hurts all women. It invites gender policing that could subject any woman to invasive tests or accusations of being “too masculine” or “too good” at their sport to be a “real” woman.

この分断統治の戦略は、完全に間違えている。トランスである女性を排除することは、すべての女性を痛めつけるのだ。侵襲的な検査や、「本当の女にしては男らしすぎる」とか競技成績が「本当の女にしては優秀過ぎる」とかといった非難に、全ての女性を晒すジェンダー警察を招き入れてしまうのだ。

This myth reinforces stereotypes that women are weak and in need of protection.

この神話は、女性は弱く、保護を必要としているという偏見を強化してしまう。

Politicians in Australia, the Us & Uk have used the “protection” trope time and time again, including in 2016 when they tried banning trans people from public restrooms by creating the debunked “bathroom predator”myth.

オーストラリア、イギリス、アメリカの政治家たちはこの「保護」という言い方を何度も利用してきた。今では既に間違いだと示されている「トイレにおける捕食者」神話(訳者注:トランスジェンダーの人々、特にトランス女性は、トイレで性暴力を働こうとしている犯罪者だという信念)を作り出すことで、2016年にトランスの人々が公共のトイレを利用することを禁じようとした時もそうだ。

The real motive is never about protection — it’s about excluding trans people from yet another public space. The arena of sports is no different.
On the other hand, including trans athletes will promote values of non-discrimination and inclusion among all student athletes.

本当の目的は、保護なんかでは一切ない。トランスの人々を更に公共の場から排除することだ。同じことがスポーツの世界にも言える。
一方で、トランスのアスリートを受け入れることは、全ての学生アスリートたちに対して非差別と包摂の価値観を奨励することになるのだ。

As longtime coach and sports policy expert Helen Carroll explains, efforts to exclude subsets of girls from sports, “can undermine team unity and also encourage divisiveness by policing who is ‘really’ a girl.”

長年コーチを務め、スポーツに関する政策の専門家をやってきたヘレン・キャロルは、スポーツから一部の女子を排除しようとすることについて「チームの団結を蝕み、誰が『本当に』女子かを監視することで分断を奨励してしまう」と言っている。

Dr. Mary Fry adds that youth derive the most benefits from athletics when they are exposed to caring environments where teammates are supported by each other and by coaches.

Dr. メアリー・フライも、若者が運動からもっとも多くの利益を得られるのは、チームメイトたちが互いにサポートしあい、コーチたちにもサポートされているような思いやりのある環境に身を置ける時だ、とコメントしている。

Banning some girls from athletics because they are transgender undermines this cohesion and compromises the wide-ranging benefits that youth get from sports.

トランスジェンダーだという理由で一部の女子の運動への参加を禁じるのは、この団結を蝕むものであり、若者がスポーツから得られる様々な利益を損なうものだ。

FACT: Trans athletes do not have an unfair advantage in sports.
MYTH: Trans athletes’ physiological characteristics provide an unfair advantage over cis athletes.
Women and girls who are trans face discrimination and violence that makes it difficult to even stay in school.

事実:トランスのアスリートは、スポーツにおいてアンフェアに有利であることはない。
神話:トランスのアスリートはその生理学的な特徴により、シスのアスリートよりもアンフェアに有利になっている。
トランスである女性と女子は差別や暴力に晒され、(訳者注:スポーツでの活躍どころか)学校にとどまることすら難しい状況に晒されている。

According to the U.S. Trans Survey, 22 percent of trans women who were perceived as trans in school were harassed so badly they had to leave school because of it. Another 10 percent were kicked out of school.

アメリカのトランスに関する調査によると、トランス女性のうち学校でトランスだと見なされていた人たちの22%が、あまりに酷い嫌がらせのせいで学校を去っている。彼女らとは別に、さらに10%が学校を退学させられている。

The idea that women and girls have an advantage because they are trans ignores the actual conditions of their lives.

女性と女子がトランスであるということで有利になっているという考えは、実際の彼女らの生活の状況を無視している。

Trans athletes vary in athletic ability just like cisgender athletes. “One high jumper could be taller and have longer legs than another, but the other could have perfect form, and then do better,” explains Andraya Yearwood, a student track athlete.

トランスのアスリートも、シスのアスリートと同様に、運動能力はまちまちだ。「ある高跳び選手はもうひとりの高跳び選手よりも背が高く足が長いが、そのもうひとりの高跳び選手はフォームが完璧なため、成績は勝っているなんていうことだってある」というのは、学生陸上選手アンドラヤ・イヤーウッドの言葉だ。

“One sprinter could have parents who spend so much money on personal training for their child, which in turn, would cause that child to run faster. ” In Connecticut, where cisgender girl runners have tried to block Andraya from participating in the sport she loves,..

….the very same cis girls who have claimed that trans athletes have an “unfair” advantage have consistently performed as well as or better than transgender competitors.

更には「ある短距離選手が、その子のためにたくさんのお金をかけてパーソナルトレーナーを付けてくれている両親のおかげで、より早く走ることができているなんてこともあるだろう」とも。コネティカット州でアンドラヤが大好きな競技に参加することを阻止しようとしたシスジェンダーの女子走者たちは、トランスのアスリートは「アンフェア」に有利だと主張していたが、トランスジェンダーの他の競技参加者と同等、あるいはもっと優秀な成績を収めている。

“A person’s genetic make-up and internal and external reproductive anatomy are not useful indicators of athletic performance,” according to Dr. Joshua D. Safer.

Dr. ジョシュア・D・セイファーによれば、「ある人の遺伝的構成や、再生産(訳者注:子どもをつくること)に関する体内外の臓器は、運動能力の指標としては役に立ちません」

For a trans woman athlete who meets NCAA standards, “there is no inherent reason why her physiological characteristics related to athletic performance should be treated differently from the physiological characteristics of a non-transgender woman.”

更に、NCAA の基準を満たしているトランス女性のアスリートについては「運動能力に関係しているその人の生理学的な特徴が、トランスジェンダーではない女性の生理学的特徴とは別物として扱われるべきと言える内在的な根拠はありません」と述べている。

FACT: Trans girls are girls.
MYTH: Sex is binary, apparent at birth, and identifiable through singular biological characteristics.

事実:トランスの女子は、女子である。
神話:セックスは2つだけだ。生まれた時には明らかで、一つの生物学的特徴によって見分けることができる。

Girls who are trans are told repeatedly that they are not “real” girls and boys who are trans are told they are not “real” boys. Non-binary people are told that their gender is not real and that they must be either boys or girls.

トランスの女子はお前は「本当の」女子ではないと何度も聞かされるし、トランスの男子はお前は「本当の」男子ではないと聞かされる。ノンバイナリー(訳者注:性別二元論にとらわれないという意味)の人々は、お前の性別は真実ではない、男子か女子のいずれかに違いない、と聞かされる。

None of these statements are true. Trans people are exactly who we say we are.

There is no one way for women’s bodies to be. Women, including women who are transgender, intersex, or disabled, have a range of different physical characteristics.

そういった物言いは、すべて間違っている。トランスの人々は、自分たちがこうだと言っている性別そのものなのだ。女性の体はこうだ、というひとつの在り方などない。女性、つまりすべてのトランスジェンダーの女性、インターセックスの女性、障害を持った女性を含めた女性は、様々に異なった身体的特徴を持っている。

“A person’s sex is made up of multiple biological characteristics and they may not all align as typically male or female in a given person,” says Dr. Safer.

Dr. セイファーは「人の性別は多数の生物学的特徴の組み合わせによるもので、同じ人の中でもそれらの特徴が典型的に男性もしくは女性であると一貫しているとは限らない」と言う。

Further, many people who are not trans can have hormones levels outside of the range considered typical of a cis person of their assigned sex.

更に言えば、トランスではない人々にも、シスの人々の典型的なホルモンのレベルと考えられている範囲を外れたホルモン値の人がたくさんいる。(URL

When a person does not identify with the sex they were assigned at birth, they must be able to transition socially — and that includes participating in sports consistent with their gender identity.

生まれた時に割り当てられた性別にアイデンティティを持たない人は、社会的な移行ができるようにしなければならない。その中には、本人の性自認と合ったスポーツに参加できることも含まれる。

According to Dr. Deanna Adkins, excluding trans athletes can be deeply harmful and disruptive to treatment.

Dr. ディアナ・アドキンスによれば、トランスのアスリートを排除することは非常に有害であり、(訳者注:トランスジェンダーであることに伴う)治療を妨げることになる。

FACT: Trans people belong on the same teams as other students.
MYTH: Trans students need separate teams.

事実:トランスの人々は、他の学生と同じチームにいるべき存在だ。
神話:トランスの学生が入れる別のチームが必要だ。

Trans people have the same right to play sports as anybody else. “For the past nine years,” explains Carroll, “transgender athletes have been able to compete on teams at NCAA member collegiate and…

universities consistent with their gender identity like all other student-athletes with no disruption to women’s collegiate sports.”

トランスの人々は他の誰とも同等なスポーツ参加の権利を持っている。キャロルによれば、「過去9年間、NCAA に加盟している大学において、他のすべての学生アスリートと同様に自らの性自認と合ったチームでトランスジェンダーのアスリートは競技をしているが、女性の大学スポーツがそれによって破壊されたという事実は無い」という。

Excluding trans people from any space or activity is harmful, particularly for trans youth. A trans high school student, for example, may experience detrimental effects….

to their physical and emotional wellbeing when they are pushed out of affirming spaces and communities. As Lindsay Hecox says, “I just want to run.”

トランスの人々を排除するのは、どんな場からでも、どんな活動からでも、特に若者に対しては、当人たちを痛めつけることになる。例えば肯定的な場やコミュニティーから排除されたトランスの高校生は、身体的にも精神的にも健康を損なう可能性がある。リンジー・ヘコックスは「ただ走りたいだけなのに」と言っている。

Believing and perpetuating myths and misconceptions about trans athletes is harmful. Denying trans people the right to participate is discrimination and it doesn’t just hurt trans people, it hurts all of us.

トランスのアスリートに関する神話や誤解を信じたり広めたりすることは、痛めつけることだ。トランスの人々の参加する権利を否定することは差別だし、それはトランスの人々を傷つけるだけでなく、全員を傷つけるのだ。

以上でこのスレッドは終わりだが、更に性別移行においてトランス女性がどのような身体的プロセスを経るのか、ミラーの別のツイート・スレッドを紹介する。

※ちなみにこれはミラーが別の人に向けてリプライで書いたもののため、おそらく日本語ではこのように表現するのが適切だろうと判断し、ですます調にしてある。

As a former male dual International athlete & first grade male rugby league player I never suffered any broken bones in over 27 years of men’s sport. In my first year as a transitioned female soccer & @aflwomens player I broke 3 bones in my arm playing soccer & 4 ribs playing AFL

2競技における元国際男子アスリート、またラグビーリーグでの一軍男子選手として、私は27年以上の男子スポーツ界での経験上、一度も骨折したことがありませんでした。性別移行をしてからサッカーと女子オーストラリアン・フットボール・リーグ(AFL)での活動を始めると、1年目ですでにサッカーで腕を3箇所、AFL で肋骨を4箇所も骨折しました。

The XY transitioned female generates no hormones within an acute few years, then body goes into complete menopausal state; due to complete androgen deprivation creating 24 major contraindications the body no longer is able to support itself as protein cell synthesis ceases,

is a key need and function of the human physiology which all high performance athlete require need to maintain health body and in mind.

XY 染色体を持つ女性が性別移行をすると、直後数年の間に、ホルモンを生成できなくなります。アンドロゲンが喪失するため、身体が完全に更年期状態に入ります。禁忌(訳者注:身体的な状況が理由で、受けるべき治療ができなくなること)が24こ発生し、細胞のタンパク質合成が止まることにより、身体が自身を支えられなくなります。

細胞のタンパク質合成は、人間の生理上不可欠なものであり、健康な身体と精神を保つために全ての優秀なアスリートが必要としているものです。

The transitioned female is actually competing at a disadvantage and eventually will no longer be able to participate in high performance sport due to the bodies ability unable to support itself, putting the athlete at incredible risk.

性別移行をした女性は、実際、(訳者注:有利どころか)不利な状況で競技に参加しているのです。そして最終的には身体の能力が身体自身を支えられなくなり、大変な危険があるため、高度なスポーツに参加することはできなくなります。

XX females androgen receptors designed by nature for the purpose of conception, are highly sensitive to testosterone requiring 6-8 times less to attain the same level of health of someone born XY chromosome.

XX 染色体を持つ女性は妊娠のためにアンドロゲン受容体を持っていますが、これはテストステロンに非常に敏感ですので、XY 染色体を持って生まれた人の6分の1〜8分の1のテストステロンの量で、同等の健康レベルを保つことが出来ます。

An XY male becomes unwell at 9-12nimol/L androgens known as Hypogonadism. Requiring Androgen support to bring up levels to meet the needs of healthy body function.

XY 染色体を持つ男性はアンドロゲンが9〜12ナノモル/Lまで下がると性腺機能低下症と呼ばれる状況に陥ります。そういった場合は、健康的な身体機能に必要なレベルまでアンドロゲンを摂取する必要が出てきます。

An XY female goes into menopause at 9.6nmol/L after transition the body loses the ability to generate any hormone and reduced to a level 0.4nmol /L. The transitioned females are made very unwell. Eventually making sport impossible.

XY 染色体を持つ女性が性別移行をすると、9.6ナノモル/Lの時点で更年期状態に入ります。そしてホルモンの生成ができなくなり、0.4ナノモル/Lまで下がります。性別移行をした女性はかなり健康状態が下がり、最終的にはスポーツをすることが不可能になります。

The XX female functions healthy between nurtural [sic: natural] testosterone levels 1-3nmol/L. Below 1nmol/L XX women become unwell. This illustrates the receptor uptake ability and sensitivity of XX females

XX 染色体を持つ女性は自然なテストステロン値1-3ナノモル/Lで健康を保つことが出来ます。XX 染色体を持つ女性の健康状態が良くなくなるのは、1ナノモル/Lを下回ったときです。つまりこれは、XX 染色体を持つ女性の受容体の(訳者注:テストステロンに対する)吸収能力と敏感さを示しています。

XY women are the only women forced to compete in sport unhealthy, in a complete androgen deprivation state – only athlete competing unwell as a prerequisite to participate in sport.

XY 染色体を持つ女性は、女性の中でも唯一、不健康な状態で、つまりアンドロゲンが完全に失われた状態でスポーツをやることを強いられているのです。その状態にあることで、初めてスポーツに参加するための要件を満たすことができるのです。

ミラーのツイートの紹介は以上。最後に、このスレッドをリツイートした時にフォロワーさんが書いてくれた実体験もこちらに紹介する。プロフィールによれば、この人は「部分的にノンバイナリーな、トランス男性」とのこと。

Can I also add from personal experience, after going on testosterone and reaching puberty levels of it, it did absolutely jack shit to make me a better athlete. Top-heaviness nerfed me and any extra muscle I gained went into hauling 20 extra lbs of weight around.

私も実体験を共有させて下さい。テストステロンを摂取して思春期レベルに達したとき、それは私のアスリートとしての能力を一切上げてはくれませんでした。上半身が重くなったことは私を弱くさせましたし、筋肉を鍛えても、それはずるずると引きずる約10kgの重りになっただけでした。

※カバー写真は The Daily Advertiser の記事より。

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ABOUTこの記事をかいた人

1985年5月26日生まれ。栃木県足利市出身、ニュージーランドとアメリカを経て現在は群馬県館林市在住。2011年にシカゴ大学大学院社会科学修士課程を中退。以降ジェンダー・セクシュアリティを中心に執筆や講演など評論活動をしています。 LGBT運動と排外主義のかかわり、資本主義とLGBT、貧困二世・三世のLGBT/クィア、性的欲望に関する社会的言説の歴史、セックスワーカーの権利と尊厳などに特に関心があります。