婚姻制度は官製の弱者ビジネスです(松沢さんへの応答)

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2022年11月20日

2. 社会制度についての批判を、その制度の利用者に個別に聞かせることは無意味か

この問いについて、松沢さんは「意味などなく、解決するわけもない」と言い放っています。たしかに、社会制度というものが人々の行動や言語使用、意識などとは無関係に存在しているという前提を共有するなら、松沢さんの言うことは正しいでしょう。けれども社会制度は実際、人々の行動や言語使用、意識などと相互に影響しあうことで維持されたり微妙に変化したりしています。
実際社会運動においては、人々の意識を変えること(自分の意識もまた変えてゆくこと)、悪意を持って使われてきた言葉に代わる価値中立的な言葉の使用を呼びかけること、差別をしないように呼びかけること、差別に対抗するアクションを呼びかけることなど、制度ではなく人を対象とした活動がたくさん行われています。歴史的にも、「ひと」を対象にしなかった運動は私の知る限り存在しません。「ひと」を対象とする活動を行うことで、批判対象の制度が差別的であるという意識を広めたり、制度の利用者を減らすことで制度を脆弱なものにしたり、といったことが可能になるからです。
そもそも、高校無償化の朝鮮学校除外という制度や、戦後の国籍法という制度、外国人登録制度&在留カード制度など、様々な制度を利用・援用して民族差別や人種差別を行っている「制度の利用者」である「レイシスト」を対象にしているのが、東京大行進です。あまりに「レイシスト」という「ひと」を対象としすぎていて、もうちょっと制度を対象にした批判的活動があったほうがいいんじゃないかとは個人的に思いますけれど、松沢さんのように「ひと」を対象とする運動が無意味であるとまでは、私には言えません。
「ひと」が制度に影響を及ぼすと同時に、制度も「ひと」に影響を及ぼしているので、「ひと」を対象とする運動は簡単ではありませんが、少なくとも「制度」と「ひと」の両方に同時にはたらきかけることが社会運動に必要だろうということは、社会運動に携わるひとは実感としてわかっているんじゃないかと思います。

(これは余談ですけど、たとえば、松沢さんは「単なる嫌がらせにしかならない」と言うのでしょうけれども、私は「婚姻制度は差別的だ」という主旨のことを人に直接言うことがあります。結婚を控えていたり、そう遠くない将来結婚する予定だったり、あるいは既婚者に対しても、言ったことがあります。たしかに中には「なんでそんなこと言うの」という言葉だったり態度を返してくるひともいたけれど、一方で、「たしかに考えてみたら、結婚できることって特権だよね」とか「そういう風に考えたことなかった。結婚なんて当たり前のことだと思ってたけど、そんなに単純なことじゃないんだね」とか、そういう応答をするひとも事実存在しました(そういう応答をした人たちを私は尊敬するし、友だちでよかったなと思います)。こういうとき、相手との関係性や、私の話し方・言葉のチョイス、そして相手の個人的な信条や考え方などによって、反応は大きく影響されるだろうと思います。 @rinda0818 さんに「婚姻制度は差別です」と言ったひとと @rinda0818 さんの関係性がどうだったのか、どういう口調で言われたのかなど私にはわかりませんが、そんな個別の話から、松沢さんの言うような「単なる嫌がらせにしかならない」「意味などなく、解決するわけもない」という一般的な事実の認定までは、大きな飛躍があります。)

3. 「なぜ『東京大行進』が個別施策を掲げなかったのか」について

これについては私は特に何も言ってないので、松沢さんの文章を読んで「マサキチトセってのも、そういう批判してんのか」と思ったひとがいたら、それは誤解です。

以下は、松沢さんの「補足」投稿(同様に一般公開設定)についてです。

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ABOUTこの記事をかいた人

1985年5月26日生まれ。栃木県足利市出身、ニュージーランドとアメリカを経て現在は群馬県館林市在住。2011年にシカゴ大学大学院社会科学修士課程を中退。以降ジェンダー・セクシュアリティを中心に執筆や講演など評論活動をしています。 LGBT運動と排外主義のかかわり、資本主義とLGBT、貧困二世・三世のLGBT/クィア、性的欲望に関する社会的言説の歴史、セックスワーカーの権利と尊厳などに特に関心があります。