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2022年11月20日

よくさー、初の海外旅行が不安ーとか言うじゃん。
英語分かんないから入国審査が怖いよーとかさ。

いやいや、そんなんちょれーから。
ちょれーっつーか、ちょれくないかもしんないけど、
書いてあんじゃん、何十冊と、本に。
本屋に行けばいくらでも見つかるよって。
大丈夫大丈夫安心して、入国できるってあんたなら。

なんつって、何十回と入国を経験した私なら言えるわけ。
17歳の若さと度胸で初海外をこなしてから、
もう入国という入国をほしいままにしてきた。
なんならそろそろ国の方から「寄ってく?」って言われてもおかしくない。

そう、入国に関しては。

えっと、1時間くらいすっげー迷った。
入ろうか、帰ろうか。

いや、だって、入る瞬間を人に見られるのもやだし、
入ってからも、受付とかあるんでしょ?

「これに着替えてくださーい」なんて言われちゃって、
あられもない姿に着替えるシステムだったらどうしよう。
え、その体型で? みたいな顔されたらどうしよう。
そもそも受付で入店拒否とかされたらどうしよう。

とにかくさっぱり勝手が分からないわけで。

もー、本に書いといてよー! って。
ガイドブックとかに書いといてよー! って。
Next. って言われたら前に進むとかさ、
Sight-seeing. って言っとけば何とかなっからとかさ。

えっと、は、ハッテン場…? ってやつの話なんですけどね。

ハッテン場って、こう、ゲイの皆さまにおかれましてはホームっていうか、
少なくともアウェーじゃないっていうか、
「はいはいハッテン場ね」みたいな空気っていうか…。
へたしたら「彼とはハッテン場で出会いましたー」とか言い出すやつもいるくらいで。
うそー!? っつって。

一方ゲイじゃない人からしたらもう、未知の世界で。
「ハッテン場に潜入!」とかやってるユーチューバーもいるくらいで。
ちょっと気を許すと「ハッテン場で掘られてきた」みたいな動画まで出てる始末。
ちょっとしたSFの世界。
動画のエンドロールに「スティーブン・スピルバーグ」って書いてあっても驚かない。

そこにきて私、一応ゲイの端くれの私、

全くのアウェー。
アウェーっつーか、ほぼ未知との遭遇。
なんならノンケ(異性愛者)の皆さんよりも、遭遇できてない。

遭遇っつーか、遭難…?

えっと、そんな私でもね、まあ、性的な経験が皆無というわけではなく。
ちょっとしたまぐわいというかね、こう、多少のことはね。
したことあるっつーか、したことないわけではないっつーか。
早く言えば、Bまではあるっつーか。

でもこう、お相手は全員知り合いで。
友達から発展しての、とか。
部活の先輩と酔った勢いで、とか。
いや、回数は微々たるものなんですけどね。

そんで、なんならBっつーよりAがいいっつーか。
もっと言えば、
「お互いに相手の気持ちに気づいてるけど言い出せなくて、なんか距離近くてドキドキしてるけどもっと近づきたいけど何かの拍子で手が触れちゃってビクッて離しちゃって何にも無かったかのように話し続けてじゃ電車の時間だからバイバーイなんつって夜にベッドで相手も自分のこと考えてるかななんて想像してもだえる」
っていうのが、理想形だから。
それこそ恋愛だよね! って感じする。漫画に描いてあったやつ。

だからなんならちょっと、さっき「Bまでは」とか言ったけど、
そもそもCは勘弁みたいなことある。
Bで終わりにしない? って。

そもそもAから始めるから、BだのCだの、挙句の果てにはFだのって話になるわけで。
今日からみんな、xとyにするってのどう?
pとqでもいい。
恋は二元一次方程式で考えよ? 今日から。

でね、一方ハッテン場のやつ。
平気で掘った掘られたやってるから(たぶん)
ハッテン場の公式掲示板は「掘りたいっす」「掘られたいっす」のオンパレード(個人の印象)
芋農家でもそんなに掘ってないんじゃない? ってくらい掘ってる(っぽい)
日本中のゲイが集まったら、明日あたりブラジルに着くと思う(嘘)

わかるの、出会いの場でもあるって。
かつてネットが無くて、掲示板とかも無くて、
雑誌の文通欄とかで交流してた人にとっては、
もうどっかに集まるしかなかったんだって。

なんならノンケはそこら中で出会ってるわけで、
学校の教室も、オフィスも、同窓会も、バーも、
なんなら始業時間ギリギリの学校の前の角だって、
ぜーんぶノンケのハッテン場。
そこら中でハッテンしてっからあいつら。
ちょっと気を許すとすーぐ出会っちゃうから。

もうさ、国の予算でさ、婚活とか言っちゃってる時代よ?
チョット待ってって。
大黒摩季も言ってる。チョット待ってよって。
チョット待ってよ Good bye って。(どっちだよ)
誰かゲイのハッテン場に助成金出そうって思った人いる? 今までに。
ゲイも同じ税金払ってるんじゃない? って。

そんなゲイとノンケの扱いの違いがある現代日本でさ、
ハッテン場っていう文化を守ってる人たちとか、
ハッテン場を楽しんだり、出会って友達作ったりするのって、
それこそ革命だよねっつーか、そういうとこあるよ。尊敬する。

でもね、もしいつかゲイのハッテン場に助成金出そうって言い出すブットビな政治家がいたとして、
そんでそれがブットビなことに通っちゃったとして、
私、全然恩恵ない。

どのくらい恩恵がないかって言うと、
1時間近く迷ってようやく勇気を振り絞って入ったハッテン場に誰もいなくて、
なんなら受付の人もいなくて、
あれ? 営業時間外? ってくらいの静寂っぷりで。
これ漫画なら絶対「シーン」って描いてるとこ。

一応枯れ木のような声で「すいませーん…」って言ってみた。
したら奥からくたびれたダンカンみたいな見た目の男性が慌てて出てきて、
学生証あれば割引できますよなんて言われたからつい学校名と実名全部見せちゃって、
ようやく踏み入れたハッテン場でひとりとりあえずタバコを吸ってみて、
誰か来るかなーなんて期待と不安が2:8くらい。

なんなら誰も来なければいいなーなんて本末転倒なこと考えて、
いやでも来たとしてもタイプじゃなかったらどうしようとか、
こっちが相手のタイプじゃなくて素通りされたらショックだなとか。

じゃあでも、いざってなったら相手が
すごいアクロバティックなプレイを試みたらどうしようってのもあって。
Cもままならないのに、初めてのCがウルトラCだったらどうしようって。
ちょっと一回考えよう、って言うよね。
個人競技じゃないんだよって。これは団体戦だからって。
チームワークだよって。One for all, all for one. だって。

3時間くらいいたかなー。
ずっと one だった、私。

ちょっと備え付けのパソコンでメールチェックとかしちゃったもん。
こみいった内容のメールもあったんだけど、
添付のPDF開いてPDFに書き込みして、送り返す余裕あった。

なんなら Gmail 開くと出てくるチャット機能で、友達と夕飯の約束してた。
魚民に行くかやるき茶屋に行くかでそこそこ揉めてた。

ま、いっか、って思って、よーし魚民行くぞーなんつって
受付の人に「すみませーん、お会計を」なんつって。
もう、全身からオーラ出した。慣れてますオーラ。
こういうこともありますよね、平日の昼間ですしね、みたいな。
ほらハッテン場って運みたいなとこあるじゃないですかーみたいな。
全然もう、おかげでメールも処理できたし、かえって良かったっていうか。

店員さん、すっげー恐縮してた。
「いやなんか、すみませんでした、これ良かったら使ってください」って。
私も「あ、はい」なんつって受け取って。

そのあと階段を降りるときもずっと出してたよ、慣れてますオーラ。
惜しみなく出してた。
ちょっと空き時間ができたから寄ってみたけど、
まあなんていうの、漫画喫茶に寄る感覚?
気軽に寄れちゃうハッテン場って、ゲイの部室みたいな感じってゆーかー、これも青春ってゆーかー、コミュニティースペースってこういうことだよねーって。

歩き出して、さっきもらった紙っぺらを見たら、
「スタンプカード」って書いてあった。
8こスタンプがたまると、1回無料で入れるんだって。
へーなんつって裏を見たら、8こ押されてた。ダンカンの心遣いだった。

いつかまた行くぞなんて思って捨てられなかったスタンプカード。
もう行かねーなって思って、さっき捨てました。(10年越し)

ABOUTこの記事をかいた人

1985年5月26日生まれ。栃木県足利市出身、ニュージーランドとアメリカを経て現在は群馬県館林市在住。2011年にシカゴ大学大学院社会科学修士課程を中退。以降ジェンダー・セクシュアリティを中心に執筆や講演など評論活動をしています。 LGBT運動と排外主義のかかわり、資本主義とLGBT、貧困二世・三世のLGBT/クィア、性的欲望に関する社会的言説の歴史、セックスワーカーの権利と尊厳などに特に関心があります。