BがboysでLがlove

どうすんのどうすんの、って。
やばいよやばいよ、って。

なんか堂本光一のこと好きかもしんない、って。

小学校6年生のこと。
何気なしにテレビを観ていて、たぶん歌番組で、
堂本剛は歌がうまいね〜なんつー雑談中の雑談を繰り広げる我が家のリビングで。

私、気づきました。
堂本光一、かっこいい。
って。

なんだろーなー、こう、少し年上の同性に憧れちゃうってゆーか、
自分、先輩のことすげーかっけーと思ってます! みたいなのかな?
って頭の中で整理しようとしたんだけど、
違うっぽい。

これ、「好き」ってやつだ。

ちょっと待ってちょっと待って、って。
一回落ち着こう。

えっと……堂本光一は……男。
で、私はー? 私におかれましてはー? 私どっちだっけー?

……男。

おいおーい! って。
ピピーッ! つって。
レフェリー急いでー! って。
この人ルール違反してまーす! って。

違うじゃん、無いじゃん、ダメじゃん。
男が男を好きとか、変じゃん。
こないだ「ちょっともしかして…あの、ひょっとしたら、そっち?」
って思った高橋くん(同級生)のこと、キモいキモいって、
露骨に嫌な顔して避けたじゃん、私。

いや〜無いわ〜。無い無い。
幼稚園のころから女子大好きだったじゃん。
女子ってゆーか、エロアニメ大好きだったじゃん。
まあまあ過激なやつ、あの手この手で観てたじゃん。
じーちゃんの隠してたエロ本とか発掘して読んでたじゃん。

どしたー? って。
なにときめいてんのー? って。
堂本光一は男だよー? って。

いやいやいやいや違う違う違う違う。
堂本光一はさ、ほら、髪の毛長めだし。
こう、シルエットだけ見たら女子…と言えなくも…なくはないっつーか……

こう、女子が好きなのは基本としたうえで、
女子に見える男子にも惹かれることもあるみたいな?
そーゆーことだよね、ってことにして、事なきを得たわけ。
(あ、光一くん前はだけないで……男子感抑えて…!)

で、半年後。

あー、堂本剛、かっこいい。
率直に言えば、抱きしめられたい。
いつでも剛に出会える準備は出来てる。
なんなら光一と剛で私の取り合いになった場合の対応までシミュレーション済み。

剛はさー、今でこそ髪の毛伸ばしてさ、フェミニンな雰囲気醸し出してるし?
なんならちょっと下北風っていうか、サブカル風っていうか?
サブカル方面のアーティストに見られたいけどポップスアイドルっていう過去が邪魔してるっていうか?(←失礼)
でも当時の剛、まごうことなき、ちょーさわやか短髪男子。

アウトだー! って。
これアウトなやつー! って。
何の言い訳もできない。私、男子。剛、男子。

磁石で言ったらマイナス極とマイナス極。
くっつかないよーそっちはー!

楽譜で言ったらヘ音記号とヘ音記号。
両手ともすっげー低音。

デュエットで言ったら美川憲一と美輪明宏。
もう逆に、それぞれがどういう立場で何を歌うか見てみたい。

せんせー! 男女ペアなのに須永くんと三上くんが男同士でペア作ってまーす!
って他の男子にチクられた須永くんと三上くんは先生に引き剥がされてた。

そういうことっしょ?
私のこの、W堂本への気持ちって、そういうことっしょ?

えー、でも、まあ、アイドルだしね。
世間的な基準で見目麗しいとされる人々のことだもの。
同性のひとりやふたり、魅了しちゃうこともあるんじゃない?

ってたかをくくってた。

 

中学入学。
と同時に、好きな人ができた。

 

男子ーーーーーー!!!!!!!

男子だよーーーーーーー!!!!!

男子好きになっちゃったーーーー!!!!!!

 

もうぜんぜん一般人。一般人の中の一般人。
テレビに出るなら俄然天気予報のロケの背景。
そらジロー! って言わせたら右に出る者はいないくらいの一流一般人。
どこにいたかって、隣のクラスにいた。
堂本とかいう洒落た名前でもない。
田中。ぜんぜん田中。

でももう、田中の顔を見るたびに好きーって思って、
話しかけられるたびに好きーって思って、
うちで遊ぶ? って尋ねられるたびに行くーって即答して、
手が触れるたびに両思いー? って胸躍らせて。

もうね、漫画かってくらいのTHE恋愛。

見てた見てたー。知ってる知ってるー。
山口智子と木村拓哉がやってたやつっしょー?
実果と修司もやってたし種と隆司もやってたってばー。
わかってるってー。恋愛ってやつっしょー?
ちょれーちょれー。

 

……でも……あれたしか全部……女子と男子だったくない……?

 

見たことねーよ男子同士!
やばくない? ありえなくない?
なに、どうやったら田中と付き合えんの?

花火大会で浴衣姿のうなじにドキっとか、
普段強がってるのに弱って甘えてきた女子にドキっとか、
そーゆーのはもう全然、予習してきました先生!
なんなら男子の端くれとして、ドキっとする準備はできてたっつーか。
そのドキっをあえて女子に悟られることで恋愛は発展するっつーパターンも見えて、なんか中1にして軽く恋愛の法則発見しちゃった? くらいに思ってた。

ところがここに来てまさかの男子相手。
手も足も出ないわけ。
この情報過多の現代、信じられないと思うけど、
あの……なんてゆーかな……インターネット? ってやつ?
……無かったんだよねー……当時(1998年)……
あったのかもしんないけど、
少なくとも私の周りにはインターなネットは張り巡ってなかった。

全くの予習不足。
予習どころか、授業すら無い。
いきなりの実地。
チャリしか乗ったことないのに
教習所に着くなり、はい乗ってーって言われて乗り込んだ車で
ブレーキ壊れてるみたいな状況。(恋は止まらない)

は、初めてなんですけど! っつって。
教官も教官で「最初はみんなそうだから」とか言ってんの。
山本リンダのママかっつーの。
一回待って、って。
落ち着いてさ、コーヒーでも飲もうよ。
あ、私コーヒー飲めないんで紅茶でお願いします。

順番ってもんがあるだろうよと。
男女の恋愛にかんしてはさ、まあとにかくお手本がいっぱいあるわけ。
テレビつければ月9。雑誌見れば熱愛スクープ。漫画見れば暗転チュンチュン。
映画だって、アクション物だと思って油断してっといきなりキスシーンぶっこんでくっかんねー。

一方同性同士の恋愛、メディアというメディアから総スカンくらってる。
授業中におしっこ漏らした久保くんだってそこまで無視されてなかった。

だからね、田中との恋愛がね、全く想像できない。

 

一応当時の(男女もの)恋愛の知識を総動員してみた。
えっと……手、つなぐとか……?
キ、キッスはするの……かな?
そ、そそそ、その次には何が??
あと、田中が女子に告られたら、
「付き合ってるやついるから」って言って断る……のかな?

もう中1にして「じゃあ付き合うってどういうこと? 定義は?」みたいな
めくるめく恋愛を繰り返した挙げ句にたどり着く境地みたいなところに行っちゃって。

松井裕樹選手がインタビューで「あなたにとって野球とは」って聞かれて
「生きてることそのものっていうか、人生そのものですね」って答えてたけど、

こちとら全然、素振りもしてねーから!
恋愛という名の試合で、ベンチにも座ってないから!

何?
付き合うってどういうこと??

全くわからないまま、途方に暮れていると、近所の本屋にすごいものを見つけた。
えっと……ヒカルの碁……って、あるじゃないですか。
それのね、ヒカルと佐為(さい)が……あの……(照)

まあとにかくそういうアレ(BL)ですよ。

そういうアレ(BL)がね、近所の本屋の奥の方の棚に華々しくデビューしてまして。
もうね、半年くらいそこ通った。
教習所でも今どき2週間コースとか言ってんのに、半年通った。
通ったっていうか、なんだろう、通(とお)った?

ササーって、BL棚の前を通り過ぎながら、並ぶ表紙を舐めるように見た。
別に興味ありませんけどー、うわー、これってBLってやつですかー? って。
なんなら「この奥に用があるのに、BLの横通るのかー」みたいな嫌な顔したり。
さてさて、みたいな感じで参考書コーナーに行って2次方程式のページ眺めたり。
なんなら2次方程式開きながらチラチラ目線をBLの表紙にうつしたり。

もうね、ぜーーーーったい買えない! って思ってて。
こんなん買ったら、きっと店員さんが「今日中学生くらいの男の子がBL買っててさー」って言いふらすに決まってる! って。
へたしたらそれが友達のお姉ちゃんだったりして、学校中に広まるかも! って。

そうこうしてるうちに、BL棚、どんどん大きくなってた。
田中への想いに比例するように、グングン成長してた。
最初は1mくらいだったのが、3mになり、5mになり、
一列を埋め尽くしたなーって思ってたら、ある日反対側も全部BLになってた。
もはや圧巻。絶景。今思い出してもあれは世界遺産に指定されてもおかしくない。

絶対いるんだって思った。
この店の店員の中に、BL好きが。
その人なら理解してくれるかもという淡い期待が生まれた。

そもそもBL棚の前には、いつも誰もいなかった。
注意深く見ていると、通る人通る人、チラチラ見てた。
ときどきちょっと年上のお姉さんが、何度か往復したあとに、ババッて何冊か手にとって、逃げるようにレジに向かってた。
わかった、その作戦ね。オッケー。

ある日決意した。
今日は買うぞ! って。

その日も同志(年上のお姉さん)が、たぶん圧し潰されそうになりながら
ワンピースものを2冊レジに持っていった。
そんな同志の勇姿を見送り、私もそれに続いた。
前々から狙っていたヒカルの碁のやつ。
どこにあるかは完璧に把握していた。
なんならノールックでも取れたと思う。

もちろん、二次創作じゃないBLの存在は知ってた。
どっちかってゆーと、そっちのほうが興味はあった。
でもダメだ。
「あ〜、それね、なんかジャンプの漫画のコミックだと思って買ったら、なんかやべーやつだったww」
って家族に言い訳ができるやつじゃないとダメだ。
ちなみにこのセリフは10回は練習した。

念のため(?)ヒカルの碁のやつの上に、
既に持っていたヒカルの碁(本物)を重ねてレジに置いた。
ぬかりない。
私の中のぬかりというぬかりを何重にも封じ込めて挑んだ闘いだった。

店員さんも「あーこの子間違ってるんだなー」って思ってくれるはず。
前々からBL棚拡大の黒幕かもと目星をつけていた店員さんがレジを担当していた。
よし!
なんなら「ププ、これでこの子BLに目覚めちゃったりして」って思わせて、
彼女のBLライフに彩りを添えることになるかも。

 

なんて。

 

えっと、はい、わかってます。
それ、BLですよね。ええ。
わかったうえでの、この、購買意欲なんですけど。
あー、伝わらなかったかー。
えっとねー、あのー、田中くんってのがいまして、はい。
BLでいいんです、あってます、っていうか
なんなら私こそがBLみたいなとこあるっていうか。
BLって言われたら振り向いちゃうくらいのところにいまして……。
あ、BがboysでLがloveですよね。うん、知ってる。
色んな表紙に書いてあったもん。
表紙なら任せてってくらい、数々の表紙見てきたから。
今BL本並べてBLカルタやったら、結構いい線いく自信ある。
全国も夢じゃないと思う。

 

だから、ほんともう、店員さん、大きな声で言わないで! バカ! シー!

「こちらボーイズラブですけどよろしいですかー?」とか、何考えてんの!??

 

 

 

(『ん? なんかよくわかんないけど、いっか』みたいな顔して「はぁ…大丈夫です」って答えて、乗り切りました。それからのめくるめくBLライフは、また別の話。)

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ABOUTこの記事をかいた人

1985年5月26日生まれ。栃木県足利市出身、ニュージーランドとアメリカを経て現在は群馬県館林市在住。趣味はイラストと音楽制作。 2011年にシカゴ大学大学院社会科学修士課程を中退。以降ジェンダー・セクシュアリティを中心に執筆や講演など評論活動をしています。 LGBT運動と排外主義のかかわり、資本主義とLGBT、貧困二世・三世のLGBT/クィア、性的欲望に関する社会的言説の歴史、セックスワーカーの権利と尊厳などに特に関心があります。