今一生さんたちから頂いたご指摘について

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2022年11月20日

昨年末、「もし明日あなたがセックスワーカーになったら? 労働環境、相談所など、知っておきたいいくつかのこと」という記事を書きました。これについて、今一生(こんいっしょう)さんよりツイッターにてご指摘を頂きましたので応答致します。(「デブが捗る桜餅」さんという人のツイートも混じります)

まずはじめに拝見したのは、こちらのツイートでした。

このご指摘については、正直なところ、理解に苦しんでいます。というのも、私の元の記事において「風俗」が「東京にだけある」という前提の箇所があるのかと思い、探したのですが、見つからなかったのです。記事内で具体的に挙げている地名は「ワシントン州シアトル」、「日本」、「関西地方」の3つですので、明示的に東京に限定した箇所というわけではないのでしょう。無意識に私が東京中心主義的な人間で、それがどこかの表現にあらわれてしまっているのかもしれません。であれば、該当する箇所を教えて頂けたら幸いです。

また、「webで得られる情報にたどりつくのも大変」だからこそ、記事の最後で『風俗嬢のためのSTD(性感染症)とからだの情報サイト – Girls Health Lab (ガールズ・ヘルス・ラボ)』を紹介したのですが、何か不十分な点、あるいは不適切な点がありましたでしょうか。

記事で私は、経済的な困難によってセックスワークが「現実的な選択肢になるかもしれない」と表現しました。これは、セックスワークが【唯一の】選択肢になるという主張でもなければ、セックスワークが【最も選ばれている】選択肢であるという主張でもありません。私にはこれは、「少女が家出すると風俗に入る」というのと同じ程度に強い主張には思えないのですが、そのように解釈される可能性を意識して書き方をもっと工夫することはできたかもしれません。その点は反省致します。

「書き手に当事者性を大事にする配慮がまったくない」というご指摘、胸に深く刻ませて頂きます。私は自分自身こそセックスワーカーではありませんが、事情があり、かなり身近に元当事者がいます。また、今回のご批判を拝見したのも、ちょうどセックスワーク関係の当事者や支援者と夕飯を食べた直後のことでした。その人たちの顔を思い浮かべ、「当事者性を大事にする配慮がまったくない」と評されるような私は 彼女ら彼らを知らず知らずのうちに大きく傷つけているのではないか、と、ショックと同時に強く反省する気持ちになりました。自分の言動がひとの当事者性を踏みにじっていないか、今後更に気をつけて生きていかないといけないと思わされました。ありがとうございます。

これは、非常に悩んだところなのです。当事者にインタビューをするべきなのではないかと、執筆前も、執筆中も、そして、するべきだったのではないかと執筆後もずっと思っています。一方で、既に当事者たちによる社会運動が始まっており、私がやれること、やるべきことというのは、そういう活動を紹介することだと思い、最終的にあのような記事になったという経緯があります。ですので、冒頭以外(=見出し『「セックスワーク」とは?』以下)は当事者運動の簡単な歴史や紹介に徹底しています。あの記事で最もやりたかったことは、当事者や支援者が当事者主体で活動しているSWEETLYSWASH、そして当事者のための情報サイト『ガールズ・ヘルス・ラボ』の紹介をすることでした。当事者による運動の様子や、その成果、そして当事者たちの声は、これらのリンクを辿って頂ければご覧頂けると思っての判断でした。それはともかくとして、私の記事自体に直接 当事者の声を入れるべきだったかもしれないということは、今でも悩んでいます。

貧困状態にある人々のなかにセックスワークを選択しない人がいることは、ご指摘の通りかと思います。また、セックスワークを「現実的な選択肢」として真剣に検討する人も、貧困状態にあるひと全員ではないでしょう。ですので、ご指摘には同意致します。一方で、セックスワークを「現実的な選択肢」として真剣に検討する人の背景に貧困があるというケースが多いというのも事実です。セックスワークについて確固たる統計情報があるわけではないので「セックスワークに参入する理由の最も多いものが貧困だ」とまでは私は言いませんが、生活実感として、貧困状態にあるひととそうでないひとでは、前者にとってより現実的な選択肢として存在していると言えると思うのです(私の実感が偏っている可能性もあり、それは今後きちんとした統計調査などが実施されて行くなかで反駁される可能性を持っていますが)。

私自身も、「セックスワークがセーフティネットになっている!」と騒ぐような最近目立って来ている論調には、違和感を感じています。といいますのも、その前提に、「セックスワークがセーフティネットになってはいけない!」、つまり「セックスワークは、生計を立てる方法として本来望ましくないものである」という考えがあるように感じられるからです。また、最近よく目にするタイプのセックスワーク論には、セックスワーカーの偏見を助長してしまうのではないかと心配になるようなものもいくつかあります。ですので、今一生さんが私の記事を今回そのような危惧を持ってご覧になったそのお気持ちというのは、むしろ共感致します。また、そういった偏見を助長しかねない表現を私が用いてしまったのかもしれず、その点は反省致します。

今一生さんのお考えに同意致します。私自身がそのようなことをしてしまっていないか、今後より一層気をつけて行きたいと思います。

私にとってセックスワーカーは「他人」とは言えない存在です。具体的な事情をお話しすることはできませんが、今回の記事も含め、私がセックスワークに関する当事者運動とつながりを持っているのも、私が時々SNSやブログでセックスワーカーの尊厳や権利について語るのも、「他人」事ではないセックスワークという問題を私なりに考え、抱えているからです。そこに不備があったり、配慮が足りなかったり、無知だったり、間違ったことをしてしまうことはあるかもしれませんが、決して悪意を持って「他人の飯がうまい」というような気持ちでやっていることではありません。「デブが捗る桜餅」さんには、私がそのような悪意を持っていると写ってしまったわけで、そこには私の表現上の問題があったのだと思います。実際に悪意があるとしか思えないような表現を採用してしまったのかもしれません。今回の私の記事に限らず、これからの私の言動についても、自分が間違っている可能性を常に念頭に置き、まずは間違ったことをしないこと、そして間違ったことをしてしまったら反省し、必要であれば謝罪し、継続して考え続けることを自分に課したいと思います。

今一生さんのお考えに、全く同意致します。本当に大切なご指摘だと思います。私自身、そういった間違いを見るたびに嫌な思いをしてきましたし、私が当事者である問題については具体的に被害を被っていると感じるときもあります。一方で、私の今回の記事が今一生さんにそのような間違いを想起させるものであったことについては、反省致します。

以上です。

ABOUTこの記事をかいた人

1985年5月26日生まれ。栃木県足利市出身、ニュージーランドとアメリカを経て現在は群馬県館林市在住。2011年にシカゴ大学大学院社会科学修士課程を中退。以降ジェンダー・セクシュアリティを中心に執筆や講演など評論活動をしています。 LGBT運動と排外主義のかかわり、資本主義とLGBT、貧困二世・三世のLGBT/クィア、性的欲望に関する社会的言説の歴史、セックスワーカーの権利と尊厳などに特に関心があります。