翻訳『トランス嫌悪的なデマが基で暴力が発生したことは、反トランスのヘイトの危険性を過小評価することの危険性を示している』※2021.9.4追記あり

7月3日、ロサンゼルスのスパの外で起きた反トランスジェンダーの抗議活動の結果、2名が刺されることとなった。それも、警察が現在はデマとして扱っているソーシャルメディア投稿が発端で。ことの発端は6月24日、インスタグラムのユーザーであるクバナエンジェル(cubanaengel)が、彼女自身及び少なくとも他の2名の女性がコリアタウンのウィルシャー通りにある Wi Spa のスタッフに対して女性の脱衣室で「ペニスのある男性」を見たことについて抗議している動画を投稿した。彼女は「大ごとにしてやる、そのために録画しているんだ。世界中に広めてやる」と説明しながら、4分にわたってこのクィア・フレンドリーなスパの非差別ポリシーについてスタッフを非難し続けた。

昨年11月のトイレに関する記事に大幅に訂正を入れました

複数の読者に「TERF に寄り添いすぎている」とご指摘を受けていた以下の記事ですが、このたび読み返してみたところ、現在の私自身の認識とのズレが多く、頂いたご指摘の通りだったなと反省致しました。 取り消し線と太字を使って、...

【全文】あなたが書けたかもしれない紙面を奪ってまで(現代思想2020年10月臨時増刊号掲載)

私が状況をある程度把握できた頃には、既に抗議活動が始まっていた。活動はどんどん大きくなり、ブラック・ライヴズ・マター運動(警察による暴力 police brutality への抵抗の連帯として以前から存在していた運動。以下、BLM 運動)として瞬く間に米国内外に広がった。

ジェンダーが無くなればトランスジェンダーも無くなるのか

 前回に引き続き、トランスジェンダーの話題に触れたい。
 ツイッターを芋づる式にいろいろ見ていたら、「ジェンダーが無くなれば、トランスジェンダーというあり方も無くなる」という意見が目に入ってきたからだ。いわく、ジェンダーの解体こそが目指されるべきなのだから、トランス女性やトランス男性のようにジェンダーというシステムに裏付けされた女性性や男性性という概念を前提とする存在はジェンダーの解体に逆行していて問題だ、という主張だ。
 これに同調する別の人のツイートには「性別による差別があり、それをジェンダーと呼んでいるのだ」とあった。

 まず「ジェンダー」が何を意味しているのか、私の解釈——社会学やカルチュラル・スタディーズ、女性学、哲学などの分野ではある程度支持されている解釈だと私が思うもの(※)——を手短に説明したい。

安全なトイレの設計と運用に関する、男性が支払ってこなかったツケ(2021.6訂正あり)

 ツイッターではフォローをゼロにしたとはいえ、トランスジェンダー、特にトランス女性を取り巻く現状については最新の情報をできるだけ把握しておきたいと思って、キーワード検索や ID 検索をしてチラホラと関連ツイートを読んではいる。
 その中で、トランスジェンダーの人々の利用を想定しながら現実的にどういう具体的なトイレの設計や運用が望ましいのかを語っている人を見つけた。これについて、こういう議論こそ必要なのだと評価している意見も見た。

「トランスコリアン」が安易な3つの理由と1つの原因

「トランスコリアンには怒るのに、トランス女性にはどうして怒らないのか」
 そういった声が「TERF」(トランス排除的ラディカル・フェミニスト)たちから上がっている。

 トランスコリアンとは、あるツイッター利用者が作った言葉だ。曰く、Kポップなどを愛好する日本人が「今日から自分もコリアン」と言いだしたら問題があるだろうに、どうしてピンクのスカートを履きたがる男が「今日から自分も女」と言いだしたら女性として認めなければならないのだ、という主張らしい。
 一見筋が通っているように見えるけど、あまりに多くの前提が共有されていなくて、頭を抱えてしまった。

【出演します】書評会:吉野靫『誰かの理想を生きられはしない——とり残された者のためのトランスジェンダー史』【12/13】

先月出版された、吉野靫さんによる『誰かの理想を生きられはしない――とり残された者のためのトランスジェンダー史』のオンライン書評会(Zoom)に全体評者として参加することになりました。 参加費は無料ですので、ぜひ末尾の参加...

10月24日17時〜セクガクオンラインイベントに登壇します

 学生が主体となって開催するセクガク2020。 イベントの趣旨は「性に関する様々なテーマを扱った10のプロジェクトを通して、性に関することを学びあえる場所にすることが目標」とのこと。 こちらのプロジェクトのひとつ「男『性...