「LGBTではないフツーのひと」に考えて欲しいと思う10のこと

プライドパレードで手書きのプラカードを持つマサキ。プラカードには "IMMIGRANTS ≠ YOUR HOMOPHOBIC OTHER" とある。

プライドパレードで手書きのプラカードを持つマサキ。プラカードには "IMMIGRANTS ≠ YOUR HOMOPHOBIC OTHER" とある。
「……な10のこと」みたいなの、流行りが終わったら使えないので、今のうちに便乗しておこうかとおもいまして。うふ。

「LGBTではないフツーのひと」という言い方は、カギカッコを付けている通り、正直あまり私は使いたくない言い方です。でも、自分のことを「LGBTではないフツーのひと」と思っている人に、特に考えて欲しいことがいくつかあります。また、一番最後にも書きましたが、自分のことを「LGBT」と思ってる人にも、読んで欲しいと思っています。

また、ここに書いた10のことは、私が自分の生活の中で感じたことを基にしています。私は「LGBT」や「クィア」の代表ではないので、違う考えの人はたくさんいます。私が言う通りにして誰にでも同じように接することは、よくありません。いつでも、相手との関わりの中で、何を言うべきか、どう言うべきか、決めてください。それは、友達や知り合い、仕事の仲間、近所の人などとして、人と接するときにみなさんが普段からやっていることと同じです。間違えることはありますから、間違えたと思ったり、相手が嫌だと言ったりしたら、そのときちゃんと考えればいいと思います。

※もちろん、下で「言わないでください」と私が言ってるようなことを全然言わない人がたくさんいることは知っています。逆に、「LGBT」や「クィア」でも言う人はたくさんいます。だからこれは、「LGBT」「クィア」の立場から「フツーのひと」に向けて書いた文章ではありません。私個人から、自分のことを「LGBTではないフツーのひと」と思っている人に向けて書いた文章です。

※この文章は、「漢字仮名交じり文」に慣れている人のための情報保障のために、全部ひらがなで書いた文章を「漢字仮名交じり文」に書き換えたものです。元の文章は、以下のURLからご覧頂けます。
http://ja.gimmeaqueereye.org/entry/696

0. 基本編

この文章の本当の目的は、1.から10までのことを伝えることです。でも、オマケとして、「基本編」を書いておきます。こんなこと分かってるよ、という人ばっかりだと思いますので、飛ばしても全然OKです。

●「襲わないでね〜」 → 会う人みんなに言っていますか? そうでないなら、勝手に相手をレイプする人だと決めないでください。

● 「男と女の両方の気持ちが分かるでしょ」 → 自分の気持ちしか分かりません。それに、「男」ならこう思う、「女」ならこう思う、という決めつけは、色々な人を傷つけます。

● 「男より男っぽい」「女より女っぽい」 → 「男」や「女」を目指していない人もたくさんいます。それに、「女より女っぽい」というのは、周りにいる女の人をバカにしたり笑ったりするために言われることがあります。そういう、女の人を悪く言うための道具に、相手を使わないでください。もし、相手の男っぽさや女っぽさに「すごいなあ」と思ったら、頭の中で、「女っぽいとか男っぽいとかは、自然なものじゃなくて、みんなが作って、信じてるものなんだなあ」と感じてください。

● 「心は男なんでしょ」「心は女なんでしょ」 → 「心」のことは、自分でもよく分からないものです。確かに、自分は男だ、自分は女だ、と強く感じてる人はいます。でも、そうじゃない人もたくさんいます。それに、相手がレズビアンやゲイだと言ってるときに「心は○○なんでしょ」と言うことは、同性愛を認めたくないから、異性愛の形に押し込むことで相手を理解しようとしていると思われるかもしれません。

●「もう手術してるの?」 → 相手の下半身の形や体のあり方について訊くのは、失礼です。初めて会った相手に「包茎ですか?」とか「乳輪の直径何センチ?」とか訊くのと同じです。自分も手術を受けたいと思っていて、経験談を聞きたいのなら、ネットにたくさんありますので自分で調べてください。(「胸何カップ?」とか訊く人はたくさんいますが、それも失礼なことです。)

● 「どんなひとがタイプなの?」 → 会う人みんなに訊きますか? タイプを訊くのは、あなたが相手を好きだからですか? ただ恋の話がしたいなら、まず自分のタイプを話すといいかもしれません。

● 「性病とか怖くない?」 → 会う人みんなに訊きますか? LGBTでもクィアでも、そうじゃなくても、誰でも、色々なことをしてます。性病のリスクが高いことをしてる人もいますし、全然セックスをしない人もいます。もちろん、性教育が全然ダメだから、性病のことをちゃんと知らない人はたくさんいます。でも、相手はあなたよりも性病のリスクを知ってるかもしれません。もし相手が全然性病のことを考えないで性病のリスクが高いことをたくさんしてるとあなたに言ったら、その時は、「心配してるよ」とか、あなたの気持ちを言ってもいいかもしれません。

● 「アナルって痛そう」 → 相手がアナルを使うか使わないか、どうしてあなたが知ってるんですか? アナルセックスに興味があるなら、自分で調べてください。

● 「女同士ってどうやってセックスするの?」 → 人によります。それに、セックスレスの男女のカップルがいるように、セックスしないレズビアンのカップルもいます。女同士のセックスがしたいけどどうやるのか分からないなら、自分で調べてください。セックスの悩みを話すのは、せめて、仲良くなってからにしてください。

● 「今度二丁目連れてってよ!」 → LGBTやクィアには、新宿二丁目に詳しくない人もたくさんいます。行ったことない人もいます。それに、東京の他にも、大きな街には同じようなところがあります。まずは、自分で一番近いところに行ってください。そして、そこにいる人たちや、そこの文化が全てだと思わないでください。あと、もしそこに知ってる人がいても、他の人に言ったり、その人を脅したりしないでください。

● 「○○の友達いるよ」(○○にはレズビアンとかトランスとかゲイとかが入る) → その人と、あなたが今話してる相手は、違う人です。性格も、考え方も、趣味も、何もかも違うかもしれません。タバコを吸う人に、「タバコを吸う友達いるよ」と言いますか?

ここまでが、基本編です。

ここからが、私が本当に伝えたいことです。

1. 自分や自分の家族、知り合いも、LGBTやクィアかもしれません。

もしかしたら、あなたの周りには前からLGBTやクィアがいたかもしれません。あなたには言ってないのかもしれません。まだ言えないのかもしれません。「自分の周りにはいない」と思って話していると、周りにいる人を傷つけることもあります。

2. 私とあなたは、結構同じです

「私は、全然あなたの世界のことを知りません」という態度の人が時々います。でも、その「世界」はどこですか? あなたの「世界」はどこですか? 別の「世界」に住んでるんですか?

あなたと私の違いより、あなたと私の同じところを話しませんか? そうすれば、違うところも見えてきます。見えてきた違いから、お互いに勉強になることがあるかもしれません。

3. 同性婚の話は、難しいです

「同性婚は認められるべきだと思う」と言う人がいます。いい人だと思います。でも、結婚が嫌いな人もたくさんいます。LGBTやクィアにも、結婚が嫌いな人がいます。

「LGBTなら同性婚に賛成だろう」と言うことは、「外国人なら日本国籍が欲しいだろう」とか、「障害者なら健常者になりたいだろう」とかと同じ、決め付けです。「結婚できる自分」「日本人の自分」「健常者の自分」の方が、相手よりも素敵な人生を送っていると、決めつけないでください。あなたの周りにも、結婚で嫌なことがあった人、いると思います。

4. アメリカやヨーロッパと比べても意味がありません

LGBTやクィアの話になると、「日本は遅れてるからね」と言う人がたくさんいます。でも、それは本当ですか? なんでアメリカやヨーロッパが進んでいると思うのですか? 「ここは、アメリカみたいになったらいいな」と思うことはあります。でも、例えば「うわぁ、ここは中国みたいになったらいいな」と思うこともあります。

アメリカやヨーロッパの後ろに日本がいて、その後ろに東南アジアやアフリカ、イスラムの国がいる、と思っているなら、それは間違いです。それに、他の国に失礼です。

5. 「あなたみたいな人なら、受け入れられる」と言わないでください

「あなたみたいな人」って、どんな人ですか? 他のLGBTやクィアは、私みたいにならないと、あなたに受け入れてもらえないのですか? 例えば私は、うつ病じゃありません。うつ病のLGBTやクィアは、ダメですか? 例えば私は、大学まで行きました。学歴の低いLGBTやクィアは、ダメですか?

「いいLGBT・クィア」と「悪いLGBT・クィア」を、分けないでください。それに、うつ病は悪いもの、学歴が低いのは悪いこと、という考え方も、よくありません。そもそも、LGBTやクィアはあなたを「受け入れる」か「受け入れない」かなんて考えてません。どうして、あなただけが「うけいれる」か「うけいれない」かを考えてるんですか?

6. 「幸せならいいと思うよ」と言わないでください

誰に対しても、そんなことを言いますか? 例えば、有名な、大きな会社で働いてる人に、「幸せなら、いいと思うよ」と言いますか? 幸せじゃなかったら、その仕事は辞めるべきですか? 掃除の仕事をしてる人に「幸せなら、いいと思うよ」と言いますか? 幸せじゃなかったら、その仕事は辞めるべきですか? 幸せじゃないLGBTやクィアは、LGBTやクィアであることをやめるべきですか? (セックスワーカーも、同じ言葉をたくさん言われます。「自分が幸せならいいと思うよ」と。)

そもそも「いいと思う」という言葉が、私は嫌いです。許される必要はありません。「こいつは自分勝手なことをしてる。自分で選んでる。良くないことをしてる」と思っているから、自分が許してあげなきゃと思ってしまうのではないですか?

7. 「犯罪じゃない」とか「迷惑かけてるわけじゃない」と言わないでください

LGBTやクィアに優しい言葉をかけてるつもりかもしれません。でも、「犯罪」かどうか、「迷惑」かどうかというのは、誰が決めるんでしょうか?

例えば、2003年まで、アメリカには「ソドミー法」という法律がある州がありました。これは、アナルセックスや、オーラルセックス(口を使うセックス:フェラチオやクンニリングス)を犯罪とする法律です。アナルセックスやオーラルセックスは、犯罪だったのです。

それに、犯罪だから悪い、という考え方も、よくないです。例えば、長野でオリンピックがあったとき、オリンピックの施設を作るために日本は外国人をたくさん集めて、働かせました。そして、施設が完成したら、そこで働いていたたくさんの外国人を、「不法滞在」とかで逮捕して、日本から追い出しました。施設が完成するまでは、逮捕しなかったのに! 法律は、政府の都合のいいように使われてます。色々なことを違法にしておいて、いつでも逮捕できるようにしてるんです。

それに、男女のカップルが人前でイチャイチャするのはいいけど、女と女や、男と男がイチャイチャしてると、「迷惑だ」と言う人がたくさんいます。「子どもも見てるから」とか、そういうことを言ったりします(その子どもだって同性愛者かもしれないのにね)。

そういえば、ロシアで「同性愛宣伝禁止法」というのも出来ましたね。

8. 「LGBTとかクィアとかいっても、同じ日本人」と言わないでください

あなたと相手の共通点を探そうとするのは、いいことです。でも、本当に同じかどうかは分かりません。日本にはたくさんの外国人が住んでいます。日本で生まれたけど、日本国籍はない、という人もたくさんいます。日本語がとても上手だったり、「日本人」のイメージと合う見た目の人でも、「日本人」とは思ってない人もいます。逆に、見た目が「日本人」のイメージと違う日本人もたくさんいます。

そういう人にも、もちろん、LGBTやクィアがいます。あなたに「日本人」と間違えられるということは、その人はこれまでもたくさんの人に「日本人」だと思われてきたはずです。あなたまで、その人を傷つけたり、決めつけたりしないでください。これは、LGBTやクィアだけじゃなくて、誰と話すときも、頭に入れておくべきことだと思います。

9. 「○○だと、大変でしょう」と言わないでください

○○には、「地方」「在日コリアンコミュニティ」「製造業」「(母国の名前)」などが入ります。確かにLGBTやクィアには、都会のイメージがありますし、何か、エリートなイメージもあります。そういうイメージをLGBTやクィアが自分で出してるからかもしれません。また、アメリカやヨーロッパが進んでて、日本がその後ろにいて、その後ろに他の国がある、というイメージも、あります。でも、イメージはイメージです。信じないでください。

どんなところにも、大変なことはありますし、どんなところでも、楽しいことがあります。その中で、嫌なことに「嫌だ」と言ったり、少しずつ周りの人を変えたりしてる人もたくさんいます。「そんなところは、きっと酷いはずだ」という決めつけは、失礼です。それに、お化け屋敷を楽しむような、「見る」欲望を満たすために、LGBTやクィアを使わないでください。

10. 「LGBT」と「フツーのひと」だけじゃありません

私は、「LGBT、そうでなければフツーのひと」という二者択一(ふたつにひとつ)が嫌いです。そもそも、「フツーのひと」も「LGBT」も、色々な性的なことをしてますし、色々な性的なことをしたいと思ってます(同時に、したくないと思ってることも、みんなそれぞれあります)。本当に、多様です。そこに「性的指向」と「性自認」という二つの基準を無理矢理当てはめて、全ての人を無理矢理分けるから、「LGBT」と「フツーのひと」がいるんだと思ってしまうんです(どっちでもない人は、無視です)。そして、本当は多様なのに、カテゴリーに分けられて、「LGBT」が差別を受けています。

「フツーのひと」は、国とか世間とかにとって都合のいいことをすることが多いです。結婚すれば扶養義務が生まれますし、妊娠や出産をすれば人口の再生産です。育児や介護をすれば、国や地方自治体の福祉のお金を節約できます。だから「フツーのひと」の方が制度で優遇されてるし、「フツーのひと」であるべきだという規範があります。(「フツーのひと」も、この規範に苦しめられてます。)

そもそも「L・G・B・T」とかいうカテゴリーは、差別とセットです。初めに「L・G・B・T」の人がいて、彼ら・彼女らが差別されるようになった、というのは順番を間違えています。例えば「同性愛者」ということ言葉も、19世紀の終わりにアメリカで「ああいう人は同性愛者」と、全く違う種類の人みたいに言い出して、それから病気扱いしたり、犯罪者扱いをしてきたという歴史があります。「性的指向」と「性自認」に注目するのは、ここ百年くらいの流行りなのです。「同性とセックスするようなやつらは、何かおかしいに違いない。自分たちとは違う」という、差別的な考えが先にあって、それから「同性愛者」というカテゴリーが生まれたんです。(もちろん、その後の様々な運動の中で、自らカテゴリーを受け入れたり使ったりしてきた歴史もあります。)

だから、私は、「LGBT」と「フツーのひと」という分け方が嫌いです。

更に、「LGBT『じゃないけど』、LGBTの味方です」というポジションとして、「アライ」という言葉が最近使われてます。「アライ」という言葉は、「LGBT」と「フツーのひと」という二者択一の考え方に乗っかってるし、その考え方を更に強くすると私は思います。

それに、私がこれまでに会った人たちには、周りから「アライ」と思われそうな人や、自分で「アライ」と言ってる人がいますが、みんな、色々な考えや思いを持ってLGBTやクィアの運動をしたり、毎日の生活の中で性の規範に違和感を感じたり、それに対抗しようとしています。そういう人たちを「アライ」と呼ぶのは、私は、失礼なことだと思います。それに、性の規範に違和感を感じてることは同じなのに、「彼ら・彼女らアライ」と「私たちLGBT」に分けて、分断することは、よくないことだと思います。

自分のことを「「LGBTではないフツーのひと」と思ってる人には、「L・G・B・T」というカテゴリーがそもそも差別の歴史とともに生まれたということ、「性的指向」や「性自認」は、人の性のほんの一部しか説明できないということを覚えておいて欲しいと思います(そんなことはもう知ってる、という人には、失礼しました)。そして、これを私が言うのは傲慢なことだけど、あなた自身の思いや考えを大事にして、「フツーのひと」や「アライ」なんていう失礼な呼ばれ方に負けないで欲しいと思っています。私自身、自分が「LGBT」の側にいるとは、思っていません。ただ、周りからは、そう思われてると思います。私も、自分に向けられる失礼な呼ばれ方に負けないように頑張ります。

終わり

最初に言った通り、ここに書いた10このことは、私が自分の生活の中で感じたことを基にしてます。私は「LGBT」や「クィア」の代表ではないので、違う考えの人はたくさんいます。私が言う通りにして誰にでも同じように接することは、よくありません。いつでも、相手との関わりの中で、何を言うべきか、どう言うべきか、決めてください。

また、自分を「LGBTではないフツーのひと」と思ってる人より、自分の方が偉いとか、知識があるとかは、思ってません。みんな、それぞれの人生の中で、色々なことを経験して、学んでいます。私も、たくさんの人に色々なことを教えてもらいましたし、今でもたくさんの人から色々なことを教わっています。私の知らないこと、考えが浅いところ、たくさんあると思います。

だから、この「10のこと」を、「LGBT」や「クィア」を代表して書いたつもりはありません。自分が感じてきたこと、大切にしてる人から聞いたこと、ネットなどで目にしたものなど、自分の経験の範囲で書きました。だからこれは、「クィアとして」「LGBTとして」の立場からではなく、私というこの社会で生活してるものとして書いたものです。

また、上で書いた通り、「フツーのひと」や「アライ」と呼ばれる人たちにも、様々な思いや考えがあると思っています。それよりも私の思いや考えの方が大事だとか、優れてるとか、優先すべきことだとか、思ってはいません。少なくとも、そう思ってはいけないと思っていますし、思わないように気をつけています。それでも、偉そうな部分があったかもしれません。気づいたことがあったら、是非教えてください。そもそもこの文章を書いたこと自体が、「10のこと」を「教える」というスタイルの文章ですから、傲慢なことかもしれません。

それでもこの文章を書いたのは、 「フツーのひと」や「アライ」と呼ばれる人たちと、性の規範に違和感を感じてる人同士として、もっと一緒に考えたり、話したり、動いたりしたい、という思いがあるからです。

もちろん、それを実現するには、「クィア」や「LGBT」の立場の人もたくさんやるべきことを抱えてると思います。例えば、LGBT関係のグループに初めて来た人に「レズビアンですか?」とか平気で訊く人が結構います。1.から10.までは(もしかしたら「基本編」も)、自分を「LGBT」や「クィア」と思ってる人にも当てはまることがあります。だから、この文章は、自分を「LGBT」や「クィア」と思ってる人にも読んでもらえたら嬉しいです。

 

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