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排除と忘却に支えられたグロテスクな世間体政治としての米国主流「LGBT運動」と同性婚推進運動の欺瞞

 同性愛者権利運動にとって、あるいは自らその名を裏切るかのようにBとTを暗に、そして時に明確に排除する「LGBT運動」にとって、同性婚は不可欠な目標としてその思想的、政治的な視界の中心的な位置を占めてきたと言えるだろう。しかしこの政治的傾向——米国で同性婚推進を掲げる大手団体がエイズ危機のあと1990年代半ばから頭角をあらわし、2013年には同性愛者に関する社会運動体として最も多くの資金を諸基金から受け取るようになっていたことに象徴される現在のこの政治的流行——には、たった20年の歴史しかない。

『現代思想』2015年10月号(本日9/28発売)に文章が掲載されました。

先月の頭に青土社より「LGBT特集」を組むとのことで原稿執筆依頼を受け、これまでこのブログなどで書いてきた同性婚関連の議論をまとめた文章を書きました。

内容に即したタイトルを真面目に考えてとりあえず仮に「排除と忘却に支えられたグロテスクな世間体政治としての米国主流『LGBT』運動と同性婚推進運動の欺瞞」としておいて、 Facebook でタイトルを書いたら「喧嘩売ってるね!」と言われたので、ビビってたんだけど青土社の人は全然タイトルに注文をつけず、気づいたらそのまま印刷されていました。でもさっき実物が届いて他の人の文章をパラパラと読んでみたら、タイトルは無難でも内容は私より喧嘩売ってる人もいたので、まぁいいよね。

以下、冒頭部分のみ公開します。

翻訳『同性婚の代償』(ティモシー・ステュワート-ウィンター)

米国全土での同性婚の権利を認めた最高裁判所決定は、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーのアメリカ人にとって喜ばしい瞬間をもたらした。私たちの平等な尊厳、そして異性愛カップルが享受するのと同じ法的保護を得る権利が認められたことは、公民権の歴史における画期的な出来事である。しかしこれはまた、第二次世界大戦後に始まった同性愛者の自由を求める運動にとって、最後の歌声になるかもしれない。

過去10年間にこの運動が得た二つの大きな勝利、つまりオープンに軍隊に務める権利と、婚姻する権利が実現したと同時に、女性の同一賃金や妊娠・出産に関する選択、住居や学校の分離状況、マイノリティに対する警察暴力、及び十分な賃金と、皆にとっての職と退職の保障といった、公民権の他の領域において、改善がストップしてしまったり、あるいは逆行してしまったということは、とても不運なことであった。

夜に働く人を排除しない社会運動・アカデミアがいいよね

世の中の多くのシンポジウムだのワークショップだの読書会だのは、たいてい土曜の夕方とか、平日の夕方以降に開催されてる。開催する側としても「開催する曜日と時間帯はどうするか」を考えるにあたってできるだけ多くの人が参加できるようにしたいと思っているだろうと思うのだけれど、その「多くの人」の母数にそもそも入っていない人っているよねと思うの。

夜の仕事は(種類がいろいろあるのでまちまちだけど)たいてい午後8時くらいには始まるので、出勤準備を考えたら午後6時前にはもう他のことはできなくなる。場合によっては化粧やヘアメイクも必要だから更に早まることもある。

終わるのは12時以降、へたしたら午前3時とかなので、それから動けても何も開催されてない。この時間には移動手段も限られてる。夜の仕事はたいてい土曜が休みではないので、土曜も同じサイクルになる。

「永遠の愛を誓いません」と言える特権

この記事は古く、私の現在(2016年)の立場を正確には反映していません。同性婚については、『現代思想』という媒体の2015年10月号にこれまでの私の立場をまとめた文章が掲載されています。全文がこちらで読めますので、以下の…

映画評を書きました 「R/EVOLVE-結婚と平等とピンクマネー」

この原稿を依頼され、どんな映画なのか調べてみると、 Lil’Snoopy Fujikawa が出演しているという。私と Lil’Snoopy との最初の出会いは、映画の舞台でもあるシアトルだった。シアトルに用事があり、友人と一緒に自宅に泊めてもらったのだ。とても明るく、でも思慮深く優しい、素敵な人である。ぜひ映画を見てみたいと思い、原稿依頼を受けることにした。本編を見てみると、Lil’Snoopy 演じるラクーンは正に Lil’Snoopy にしか演じられないような素晴らしいキャラクターで、画面に Lil’Snoopy が映るたびに映画内世界がパッと明るくなり、見ているこちらまで楽しくなってしまう。観客のみなさんにも、主人公リンカーンと一緒にラクーンとの出会いを楽しんでもらえたらと思う——

米国LGBT家族・友人団体PFLAGと、「クィア」vs「それ以外」という分け方について

PFLAG(ピーフラッグ)というのは「Parents, Family, and Friends of Lesbians and Gays」(レズビアンとゲイの親・家族・友人)の略で、都市を中心に数百の部局(チャプター)と二十数万のメンバーを抱える、この類の団体では米国で(というか世界的に)最も大きなもの。「非友好的な社会で生きていくための支援」「無知や間違った情報に対抗するための教育」「差別を無くし、平等な市民権を獲得するための権利擁護」の3つの理念的柱を掲げて、LGBTの若者に加えて、かれらの家族や友人を受け入れて活動している。と言っても一般的には、子どもからレズビアンやゲイとカミングアウトを受けた親や保護者が電話やメールを通してサポートを受けたり、実際に月例のミーティングに参加するなどする場所という理解が広まっている。それは確かに間違いではないのだけれど、他にも色々やっている事実はあまり知られていない。