「LGBT」フレンドリーなら何やってもいいのか?

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2022年11月20日

昨年、大阪市淀川区が出した「LGBT支援宣言」がネットでも話題になった。

それ自体が悪いことではないとは思うものの、私は何となく不安を感じて、この区長の名前を検索してみた。そして見つけたのが、この論文(PDF)。これは、榊正文(さかき・まさふみ)淀川区長が区長に立候補する際の公募論文として提出したもので、大阪市のウェブサイトに掲載されているもの。

注目して欲しいのは、以下の部分。

生活保護受給者の地域での役割

課題は、不正受給の摘発と、就職能力があるにもかかわらず活動しない人の対策です。つまり、本当に困窮している弱者かどうかの見極めです。困難な財政状況下、生活保護より真の弱者保護、働ける人に働いてもらい、消費してもらう社会へ、という考えを推進します。
①生活保護者が、地域社会で、(例;地域ボランティア活動の義務付け等)なんらかの役割を担うように施策を検討します。(時期;24年度上期に府市政と方向を出す)

また、イダ・ヒロユキさんはブログに「大阪市淀川区の異常さ―ー生保攻撃する区長」という記事を書いています。ここに、一部を抜粋します。

[…]淀川区で、生保受給者を脅すような文書が配られました。事実上の締め付けです。

大阪市淀川区役所支援運営課(旧福祉事務所)が、区内生活保護利用者の1月分の保護決定通知書の中に異様な文書が同封されたのです。
「虚偽」の申告をしたら警察に告訴するとし、淀川区から過去1年間で4名の逮捕者をだしていると書いています。裏面は「警察OBを含む不正受給調査専任チームを配置しているとし、生活保護法60条(生活上の義務)、61条の(届出の義務)、63条(費用返還義務)など「義務」ばかりを強調しています。

大生連の家宅捜索はすべて淀川区からの告発によるもので、淀川区は異常な対応を取っています。
橋下・維新が選んだ区長が、こういうことをしてきたということです。

今の社会において、LGBTの尊厳や権利を支持するとあえて宣言することには、意味があると思います。もちろん、もっと言えば「LGBT以外は?」とかも言えるのだけれど、それよりも私個人的には「LGBTの生活保護受給者、想定してる?」という疑問が湧きますし、そもそも「LGBT」じゃなくたって生活保護を受給しているということを理由に無償労働をさせるなんていう発想自体が、「LGBT」とか以前に、アウトでしょう、と。

今後、こういうタイプのやり方は多くの政治家が採用すると思います。それを支持するかどうかは個々のクィアのみなさんの自由ですが、「ちょっとそれはどうなのか」と思うようなところがある政治家に対して「でもLGBTフレンドリーだし」とその責任を免除することは、他のマイノリティを切り捨てることでもあり、更に「LGBT」の一部の人々をも切り捨てることになるんだということは、考えてもらいたいなと思っています。

(画像:淀川区ウェブサイトより)

ABOUTこの記事をかいた人

1985年5月26日生まれ。栃木県足利市出身、ニュージーランドとアメリカを経て現在は群馬県館林市在住。2011年にシカゴ大学大学院社会科学修士課程を中退。以降ジェンダー・セクシュアリティを中心に執筆や講演など評論活動をしています。 LGBT運動と排外主義のかかわり、資本主義とLGBT、貧困二世・三世のLGBT/クィア、性的欲望に関する社会的言説の歴史、セックスワーカーの権利と尊厳などに特に関心があります。